菊池市では、市民の皆さまがより健康に暮らしていけるよう、歯と口の健康を守るための「歯周疾患検診」を実施し、一部の対象者には健診費用の助成も行っています。しかし、制度があるにもかかわらず、受診率には依然として伸びしろがある状況です。
そこで今回は、より多くの方に検診の存在とその重要性を知っていただくため、菊池郡市歯科医師会会長の城敦哉先生(菊池市)にお話を伺いました。
「歯周病」という病気(症状)について教えてください。
【城先生】
「歯周病」というのは、歯を支えている歯茎や骨が炎症を起こす病気のことをいいます。主な原因は「プラーク」と呼ばれる細菌が歯茎の境目に蓄積することで発症します。初期段階では「歯肉炎」と呼ばれ、歯茎が赤く腫れたり、多少出血することがあります。
その症状が進行すると「歯周ポケット」と呼ばれる溝が深くなり、歯がぐらついてきたり、膿が出たり、最終的には歯を失うことにつながる場合もあります。
自分で歯周病かどうかを判断する方法はあるのでしょうか。
ご自身で判断するのは難しい部分もありますが、鏡を見て歯茎が赤くなっている、腫れている、歯磨きの際に出血があるといった症状から自覚できる場合もあります。また、口臭が気になる、歯茎が下がって歯が長く見えるなども歯周病のサインです。さらに、歯がぐらつく、噛むと痛いといった症状もあります。
ただ、鏡で見るだけでは特に奥歯は判断しづらいため、歯周疾患検診を活用していただくことは非常に有効です。
歯周病が全身疾患の原因になるという話も聞きます。歯周病と全身疾患の関連について教えてください。
歯周病は様々な病気と関連があるといわれています。例えば、脳血管障害や心筋梗塞などの血管系疾患、さらに早産・低体重児出産なども挙げられます。最近では認知症やNASH(ナッシュ)との関連も指摘されています。
中でも最もエビデンスが蓄積されているのは「糖尿病」です。糖尿病になると、免疫力が低下し感染への抵抗力が弱まるため、歯周病が悪化しやすくなります。一方で、歯周病があると炎症性サイトカインという物質が発生し、インスリンの働きを妨げるため、糖尿病を悪化させることが知られています。つまり、両者は相互に悪影響を及ぼし合う関係にあります。
歯周疾患や歯の症状について、菊池地域の特徴があれば教えてください。
以前は虫歯が非常に多いという印象でしたが、近年は減少傾向にあると思います。歯周病についても、以前に比べてメンテナンスや治療に通う方が増えてきているように感じています。
しかし一方で、治療を途中でやめてしまい、そのまま放置されている方も一定数いらっしゃいます。特に30〜50代の働き盛りの方は「痛いときだけ受診し、その後は受診が途絶えてしまう」というケースが見られます。そして、悪化した状態で再受診されることも少なくありません。
虫歯については、子どもも含め全体的には減少傾向ですが、一方で多くの虫歯を抱える子もいらっしゃいますね。治療も虫歯についても、いわゆる“二極化”が見られると感じています。
虫歯がない子が増えている理由は何かあるのでしょうか。
一般的に、市販の歯磨き粉にフッ化物(フッ素)が含まれる製品が増えたことが挙げられます。また、菊池市では幼稚園・保育園などでフッ化物塗布を推進しており、その長年の取組みも効果として表れていると考えられます。
歯周疾患検診を受けるメリットを教えてください。
歯周病は、自覚症状が少ないまま進行してしまうことが多い病気です。歯周疾患検診を受けることで、早期に異常を発見し治療につなげることができます。重症化を防ぐという点が、非常に大きなメリットです。
歯科医師会では出前講座を行っていると伺いました。内容をご紹介ください。
菊池郡市歯科医師会では以前から出前講座を実施しており、歯周病などのテーマについて30分〜1時間程度、お声かけいただければ出張してお話をしています。水曜日または土曜日の午後に伺うことが多いですね。老人会や企業の健康啓発など、さまざまな場でご活用いただければと思います。出前講座は無料で行っています。
最近ではどのような団体に講座を行いましたか。
コロナ前にはなりますが、森林組合さんやJAさんのイベントでお話しさせていただきました。地域の公民館など、住民の方が集まる場にも伺います。顔を合わせてざっくばらんにお話しできる場として、ぜひご活用いただければと思います。
最後に、菊池市の皆さんへメッセージをお願いします。
日頃より、菊池市の地域歯科保健や歯科医療へのご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
厚労省のデータによれば、健康寿命と平均寿命の差は男性で約9年、女性で約12年あるといわれています。この差を縮めるためには、適切な食生活や運動、定期的な健診、社会とのつながりを維持することが重要です。
しかし、歯周病は自覚症状が少ないまま進行し、放置すると歯を失うだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、糖尿病、早産、低体重児出産、認知症、骨粗しょう症など、さまざまな病気に影響を及ぼします。
歯周病は、歯周疾患検診の活用で早期発見・早期治療が可能な病気です。菊池市では20歳、30歳、40歳、50歳、60歳、70歳の方を対象に歯周疾患検診を実施しています。気軽に受けられる検診ですので、現在メンテナンスに通われている方も、そうでない方も、ぜひ受診して健康寿命を延ばしていただきたいと思います。
城 敦哉 先生

今回は、歯周病とその予防、そして歯周疾患検診の重要性について、非常に分かりやすくお話しいただきました。菊池市の皆さまが健康に過ごせるよう、歯周疾患検診や日頃のメンテナンスにぜひ受診していただければと思います。城先生、本日はありがとうございました。
菊池郡市歯科医師会のサイト


