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韓国発見シリーズ38 「永遠の青年詩人 尹 東柱」

2014年07月01日

永遠の青年詩人 尹 東柱 

「死ぬ日まで空を仰ぎ/一点の恥辱なきことを/葉あいにそよぐ風にも/わたしは心痛んだ。星をうたう心で/生きとし生けるものをいとおしまねば/そしてわたしに与えられた道を/歩みゆかねば/今宵も星が風に吹き晒される。」 

これは、韓国の国民的詩人として有名な尹東柱の代表作「空と風と星と詩」の序詩である。尹東柱は日本が韓国を植民地にしていた時代の詩人である。彼は1917年に生まれ、1932年キリスト系の中学校に入学した後、平壤のプロテスタント系中学校に編入学するなどミッション系の学校を卒業する。日本留学も東京の立教大学である。 彼は京都に憧れていたらしく、母方の従弟、宋夢奎が京大に合格したこともあり立教大学から京都の同志社大学に転学した。しかしそれが命取りになる。特高警察のブラック・リストに載っていた宋夢奎との接触や禁じられていたハングルでの詩作が明らかになり、治安維持法違反の嫌疑で1943年7月に逮捕された。 1944年2月、尹東柱と宋夢奎は起訴され、3月31日、京都地方裁判所で懲役2年の判決を言い渡される。その後、福岡刑務所に移送された。獄中では強制労働と毎日正体不明の注射を繰り返し打たれた。注射は朝鮮人青年囚人が50人ほど並んで打たれたという。彼はおそらく脳を病み、発狂したのではないかと思われる。1945年2月16日、27歳の若さで彼は獄死した。終戦のわずか半年前である。

彼は繊細で傷つきやすい人だった。貝殻や山鳩や雀などの小さい命を愛した。彼の優しさを感じる「ひまわりの顔」と言う詩がある。「ねえさんのかおは/ひまわりのかお/陽がのぼるとすぐはたらきにゆく。/ひまわりのかおは/ねえさんのかお/うつむいてうちにもどる。」 

うら若い姉の体を吹き抜ける風や空気の感触さえ伝わってくる。心が震えてくるような詩を書いた詩人。その温かい心は国境や時代を超え、今なお感動を与える。

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