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人権・同和教育シリーズ182(11月号掲載)

2020年11月01日

『性のグラデーションは無限大』

地域人権教育指導員

末永知恵美(すえながちえみ)

履歴書に性別欄は必要か… 多くの人たちは、履歴書やアンケートなどの性別欄に何の疑問も無く、求められるままに記入してきたことでしょう。しかし、自分の性について本当のことが語れないまま、社会の差別や偏見のなかで暮らしている人にとっては性別欄への記入はどうなのでしょうか。10人に1人の割合で、自分の性に関する悩みや違和感を持つ人がいると言われています。

昨年度1月に、校区人権啓発推進協議会菊池南・北ブロック合同でLGBTQをテーマに、「あるがままに生きる」と題した当事者による人権講演会を開催しました。『幼少期から性的な違和感を持ち、勇気を出して友だちに告白するも気持ち悪がられる。自らの命を傷つけることも度々。病院で「自分を大事にして下さい」と言われるが、自分を大事にするということの意味が分からなかった。人から大事にされたことがなかったから、その意味すら理解できなかった。同じ悩みを抱えた人たちが数多く自らの命に別れを告げている。当事者達よ、人に任せずに自らのことを語れ』と。参加者の感想からも、悩みを持つ方々が少なからずいることがわかりましたが、多くの講演会でも同様の感想が寄せられるそうです。決して遠い世界のことではありません。タレントやスポーツ関係者の中にも、自分の性について公言している人が数多くいます。一般的には、告白することにかなり抵抗があるに違いありません。今まで考えたことがないという人も考えてみてください。

性自認(自分の性の自覚)、性的指向(好きになる対象) 、性表現(表現している性)の3点で考えますが、具体的には、LGBTQの、L(レズビアン)女性同性愛者・G(ゲイ)男性同性愛者・B(バイセクシュアル)両性愛者・T(トランスジェンダー)心と体の性不一致・Q(クエスチョニング)自分でも不明と大きく分類されています。そのような人が身近にいても気が付かないだけです。

高校生の思い

高校で性に関する授業をした時、「誰を好きになるかは個人の自由。個人の意思を尊重する」という意見が大半を占めました。印象的だったのは「自分はまだ勉強不足なので、偏見がある。これから勉強して変わっていきたい」「友だちが当事者で仲良くしている」という感想や、全校生徒の前で告白した生徒の存在等、自分の問題として考え、新しい人間観と豊かな感覚で日々を送っている生徒たちに、新鮮な驚きと期待を持ちました。さらに、当事者たちが辛いこと・生きにくい状況は何だろう。制服やトイレ、更衣、入浴、言葉遣い、集団宿泊の場面等を想像しながら皆で考えた結果、最も厳しいのはやっぱり差別や偏見だろうという結論に至りました。生きづらさの根源は人の意識の在り様です。そこで、性別欄の記入に苦痛や不快感を抱く人たちがいるという事実を受け止め、性別表記の必要性や分類方法について見直しが必要な時代になっているのです。制服に関しては、女子もズボン着用を可能にした小中高等学校が増えてきました。性的な課題解決のみではなく機能面からもいい選択です。

世の中は変えられるのです。当事者たちが安心して自分を語れる世の中にするために、少しずつでいいから考えていきましょう。「性のグラデーションは無限大」です。

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