最近韓国で話題の本
去年の夏ごろことし98歳のキム・ヒョンソク延世大学名誉教授が書いた「百年生きてみて」という本が話題になった。彼は「人生で一番美しく良い時代は60~75歳だった。その時期は人間的にも学問的にも成熟し、人生の幸せとは何かを理解しつつ進歩する時期」だと言う。
彼は自分の人生を振り返り、50歳ごろから身体機能の衰えを感じるが、精神的な成長と人間的成熟は75歳まで可能であると言い切る。それで彼が考える人生の黄金期は60歳から75歳だと言う。その理由を彼はこのように話す。「60歳になると成熟し、創意的な考えが溢れ出ます。ところがその60代をどう暮らすかは40代に決めなければなりません。…75歳になると人生の最高潮、その黄金期の状態をいつまで維持できるかが重要です。上手に管理すると85歳まで維持できますが、その後は肉体的な衰えで下ります」
実際、長寿大国日本では高齢の作家が増えている。2012年、日本最高権威の新人文学賞である芥川賞を受賞したのは当時75歳の黒田夏子さんだった。同じ年群像新人文学賞優秀賞者は74歳の藤崎和男さん。また小学館文庫小説賞を受けた61歳の新人桐衣朝子さんなどなど。金教授が言う黄金期の方々が大活躍している。また「現代経営学の父」と呼ばれたピータードラッカーも「私の全盛期は盛んに熱心に執筆した60代後半であった」と言った。最後に教授は老いることを「熟すこと」に例えた。青年期が花なら実は老年期だという。知恵を取りそろえ、老年期を送るなら十分幸せになるというのが著者の考えである。
日本も韓国も高齢化が進んでいるが、昔の元気だった時代を懐かしむばかりではなく、前を向き積極的に明るく生きたいと思う。これまでの経験や知恵を生かして要領よく軽やかな精神で生きていくと意外に楽しいような気がする。使徒パウロも「外なる人は衰えても、内なる人は日ごとに新しくされていく」という言葉を残したが、いつの時代も人間の感性や幸せは素朴で変わらないものだと思う。