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人権・同和教育シリーズ221

2024年01月01日

差別されない権利

2016年に川崎市の出版社が全国の被差別部落の所在地を一覧にした書籍を出版しようとし、さらにそのリストをインターネット上に公開するという事件が起きました。これに対し、250名以上の方が原告になり裁判を起こされました。

その裁判で、昨年6月28日、東京高裁で画期的な判決が言い渡されました。その一部を抜粋します。

憲法13条は、すべて国民は個人として尊重され、生命、自由及び幸福追求に対する権利を有することを、憲法14条1項は、すべて国民は法の下に平等であることをそれぞれ定めており、その趣旨に鑑みると、人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有するのであって、これは法的に保護された利益である。

要約すると「憲法の条文から考えると、すべての国民は法の下に平等であり、人間として豊かで平穏な生活を送ることができる権利を有し、これは法的に保護されなければならない」ということです。

そして、東京高裁は、被差別部落のリストが「不当な扱い(差別)を受け又はそのおそれがある」ものとして法的救済が必要だとしました。つまりこれが「差別されない権利」が認められたということで、新聞報道等で大きく取り上げられました。

また、判決ではアウティング(他人からの暴露)とカミングアウト(自ら明かすこと)の違いにも言及しています。仮に自分の立場を明らかにして活動をしている人の情報でも、他人が勝手に公表をすることは「不当な扱いや言動のきっかけになることに変わりはない」としています。

このように、東京高裁判決は部落差別についてかなり深く掘り下げて判決を出しています。


昨年11月に近畿地方で開催された全国人権・同和教育研究大会のある分科会でLGBTQ+の報告があり、当事者も交えた論議がありました。そこで交わされたのが生きづらさ(差別)の問題や「権利」の問題でした。

その中で、参加者の被差別部落の青年が「被差別当事者としての生きづらさや権利侵害は部落差別と同じです。差別は命の問題なんです」と部落差別とLGBTQ+の二つの差別をつなげて訴えました。会場からは拍手が起こりました。

被差別部落の方たちに認められた「差別されない権利」は、すべての人たちに保障されるものです。その意味で、今回の東京高裁判決は「人権」を保障しようとする私たちにとって画期的なものでした。


現在、部落差別やLGBTQ+だけでなく、障がい者差別、ハンセン病回復者やその家族に対する差別、水俣病に関わる差別など多くの人権課題が社会に存在しています。「菊池市人権未来都市宣言」に込められた想いを共有し、差別のない菊池市の実現に力を合わせて取組みましょう。


菊池市人権未来都市宣言(YouTube)


(文責:地域人権教育指導員 平井靖彦)

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