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人権・同和教育シリーズ215

2023年06月26日

熊本水平社創立100年

熊本水平社創立まで

今から101年前の3月3日に京都岡崎公会堂で、部落差別をなくそうと全国水平社創立大会が開催されました。その時「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と読み上げられた「水平社宣言」は世界最初の被差別当事者(理不尽な差別を受けている当事者)による人権宣言といわれています。

そして今年の7月18日に、熊本水平社は創立100年を迎えました。部落解放運動の炎が燎原(りょうげん)の火のごとく広がり、1年後、熊本にまで届いたのです。

この水平社創立についてある話が伝えられています。旭志の青年が水平社創立の話を聞き、当時農耕用に飼っていた大切な牛を売り、そのお金で京都まで出かけた、という話です。この青年の心の在り様を考えるとき、部落差別への怒りとともに、それを打ち砕いていく熱い希望や展望、そのようなものがないまぜとなり、抑えがたい衝動となったのだろうと思います。そして、全国水平社創立大会で高らかに読み上げられた水平社宣言の熱と光が旭志の地に届けられたのです。

このようにして県内各地に広がった部落解放への思いが熊本水平社創立へとつながったのだと思います。


水平社に集まった人たち

最初に水平社宣言について「被差別当事者による人権宣言」と書きました。世界には世界人権宣言をはじめ、多くの人権についての宣言が存在しています。そのほとんどは国や国連などの機関が示したものです。一方、水平社宣言は、当時過酷な部落差別が存在する中、被差別部落のみなさんが自ら宣言したものです。それもあって、水平社創立大会には女性や子ども、労働者や小作農民など、多くの被差別状況の人が参加しました。その後も連帯してそれぞれの解放運動を展開していきました。この運動の方向は現在も維持され、障がい者差別の解消に向けた運動や女性差別の解消に向けた運動、さらに国際的な連帯も含めた部落解放運動に受け継がれています。


「人類最高の完成」をめざして

水平社宣言には「人間を尊敬せんとすることによって自ら解放せんとする」との一節があります。人を尊敬することで差別をなくしていこう、連帯していこう、と力強く述べられています。

また、宣言の前に添えられた「綱領」には「吾等(われら)は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向かって突進す」と謳われています。「人間性の原理」とは何でしょう?「人類最高の完成」とはどのような状態なのでしょう?みなさんならどう答えますか。

熊本水平社創立から100年。残念ながら部落差別は現在も根強く残っています。人が作り出した差別は人がなくしていかなくてはなりません。それが今を生きる私たちの使命です。部落差別をはじめあらゆる差別のない社会をともにめざしましょう。


(文責:地域人権教育指導員 平井 靖彦)

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