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人権・同和教育シリーズ205

2022年10月01日

映画『破戒』について

7月に『破戒』という映画を観に行きました。島崎藤村の同名の小説をもとに製作された、部落差別をテーマにした映画です。「水平社創立100年」を記念して作られました。今年は「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と高らかに宣言した「水平社宣言」から100年です。


私が観たのは平日の昼の回でした。お客さんは30人ほどだったでしょうか。しかし、土日はほぼ満席の状況だったそうです。予定では2週間の上映でしたが、好評につき延長上映されました。内容は、若い被差別部落出身の青年教師が、父の「出身を明かすな」という戒めを破り、愛する人と新しい道を歩き始めるというものです。物語の中には、差別のおかしさに気づき共に生きようとする親友や、主人公を人として、先生として尊敬していく子どもたち、そして人として愛を貫く女性など、多くの展望にあふれる映画でした。


残念ながら、今も部落差別はあります。昨年度は菊池市でも2件の部落差別事件が起きました。しかし、このような差別にひるむことなく、部落差別のない社会の実現に向けて歩みを続けていこうとする私たちに、多くの勇気と希望を与えてくれる映画でした。


同じ時期にもう1本、部落差別をテーマにした映画が上映されました。『私のはなし、部落のはなし』というドキュメンタリー映画です。部落差別の問題を追いかけ続ける監督が、被差別当事者だけでなく、差別をしている側の人間にも聞き取りをして作り上げた3時間に及ぶ長編ドキュメンタリーです。これも平日に観に行きましたが、半分くらい席が埋まる状況でした。1週間の上映予定でしたが、7月末にもう1週間再上映されました。『破戒』とは違い、厳しい差別の現実が突きつけられる場面もあり、考えさせられる内容ではありましたが、こちらもたくさんの人が観に行ったようです。


2本の映画を観たあと、多くの人と映画について話す機会を持つことができました。そのときふと思ったのが、「こうやって部落差別の問題を話したことがある人は少ないのではないか」ということです。いまでも部落差別の問題はタブー視されているという話を聞くことがあります。確かに、大手メディアで取り上げられることは他の人権課題と比べて少ないような気がします。地元紙でも、水俣病やハンセン病に関わる問題、最近では性的少数者の問題など多くの特集が組まれてきましたが、部落差別の問題の特集というのはあまり見たことがありません。


これではなかなか日常的に部落差別の問題について触れたり考えたりする機会は持てないかもしれません。『破戒』で主人公を演じた間宮祥太朗(まみや・しょうたろう)さんは、さまざまな番組で部落差別の問題について発言しています。間宮さんの人気もあり、多くの若い世代が部落差別について触れる機会を持てたのではないのでしょうか。そういう方々が家庭や職場、友人同士など、いろいろな場所で部落差別について語り合うことができればいいなあと思います。


(文責:地域人権教育指導員 平井 靖彦)

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