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人権・同和教育シリーズ241

2025年09月01日

エディさんの微笑み

地域の一員として

以前勤務していた学校で、地域の祭りの準備会議に、ボランティアとして参加しました。公民館には、小学校区の文化協会、区長会、女性の会、消防団、保育園、学校など各種団体の代表の方々が集まっていました。その輪の中に、見慣れない男性の姿がありました。肌の色が周りの人と少し違い、話す日本語には独特のアクセントがありました。私は、「この方はどなたかな」と思いました。

会議が始まり、ステージ発表について話が及んだとき、ある方がふと、こう言いました。

「今年も、あの外国人のバンド演奏をプログラムに入れよう」

「ああ、あの人たちね。うまいよね」

と、別の方がうなずいていました。

その「外国人」は、会議室の片隅で静かに笑っておられました。おそらくご自身のことを言われていると気づいていたのだと思います。

たった一言で変わる関係

私はその場に違和感を覚えました。彼は地域のために時間を割いて参加しているのに、個人ではなく「外国人」という枠の中の一人としてしか見られていないように感じたのです。

会議が終わったあと、私は思い切って声をかけてみました。

「先ほど、バンドの話が出ていましたけど……お名前をうかがってもよろしいですか?」

彼は微笑んで、答えてくれました。

「エドワルドです。エディと呼ばれることが多いです」

その瞬間、私の中で「外国人」だった彼が、「エディさん」という身近な人になりました。たった一言、名前を尋ねるだけで、彼の見え方が変わりました。

「外国人」という見方でひとくくりにしてしまうと、その人の考えや想い、努力や日常が見えなくなってしまいます。しかし、名前を呼び、声をかけ、話を聞くことで、その人の人生の一端に触れることができると思います。

あなたらしさを大切に

地域には、さまざまな背景を持つ方々が共に暮らしています。話す言葉、育った国は違っていても、それぞれが今ここで暮らす一人の住民であり、名前を持つ一人の人間です。

以前に、外国人と日本人の両親を持ち、日本で育ち、日本語を母語とされている方が「『日本語上手ですね。箸使いも上手』と言われ、外見で判断されたことに傷ついた」と話してくれたことがありました。人権とは、一人ひとりの存在を大切にし、お互いを知ろうとする気持ちの中にあるのだと、エディさんの笑顔が教えてくれました。


文責:地域人権教育指導員 中原博昭(なかはらひろあき)

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