いい戦争なんてない
戦後80年
7月1日は熊本大空襲があった日です。600人を超える方が犠牲になられました。また、5月13日、14日は花房飛行場に空襲があった日です。記録によると、少年飛行兵を含む69名の方が犠牲になられました。今年は戦後80年を迎える年です。改めて平和について考えなくてはならないと思っています。
託されたもの
私の母は12歳の時に終戦を迎えました。それまで学校で「忠君愛国」を叫んでいた先生が、終戦後「自由と平和」を話す姿に戸惑ったことをよく話していました。父は従軍経験がありましたが、晩年「いい戦争なんてない」と言っていました。亡くなる数年前からよく戦争のことを語るようになりました。海軍として南方に行き、多くの戦艦が沈んでいくところを見たそうです。運よく自分は帰ることができたけれど、多くのなかまたちが海に沈んでいく光景は今でも目に焼き付いていると言っていました。終戦間際に傷病兵として下関の病院にいた父はなんとか生き延びることができました。
父方の叔父は終戦後シベリアに抑留されました。そのことは家族の誰にも話していなかったのですが、80歳を過ぎた頃初めて私に話してくれました。ここには書き記せないほどの壮絶な体験でした。どうして私に話をしてくれたのかを尋ねると、「もう二度とあんな戦争はしてほしくないから、学校の先生のおまえに託す」との答えでした。
教訓を生かす
法学者の内田博文(うちだひろふみ)さんは、その著書(『基礎から学ぶハンセン病問題』現代人文社)の中で次のように述べています。
教訓を生かさない国、社会、人びとは、「未来への希望」を逆に自ら摘み取り、「発展」ではなく「衰退」に向かうことになる。反対に、教訓を生かす国、社会、人びとは、「未来への希望」を確かなものにし、「衰退」ではなく「発展」に向かうことになる。
「いい戦争なんてない」
父や母、叔父は亡くなり、もう話を聞くことはできません。だからこそ話を聞いてきた私は、残してくれたものを教訓とし、それをこれから社会の中心となって活躍していく世代に伝えなくてはならないと思っています。
「いい戦争なんてない」のです。
もうすぐ暑い夏がやってきます。平和について考える夏です。
文責:地域人権教育指導員 平井靖彦(ひらいやすひこ)