古墳の特色
平成29年4月に認定された日本遺産の構成文化財の一つに装飾古墳群があります。菊池川流域に分布する装飾古墳は117基あり、それらの中で、最も上流に分布しているのが菊池市袈裟尾にある袈裟尾高塚古墳(けさおたかつかこふん)です。菊池川流域にある装飾古墳の数は日本一で、全国から注目されている装飾古墳の分布域です。その分布域の北限に位置していることが袈裟尾高塚古墳の特色の一つです。
古墳概観
この古墳は直径約24.5mの円墳です。古墳を上から見た形が円形になるように、土を積み上げており、最も高い所で約4.7mあります。この土の内部には、石を積み上げて、死体を埋葬する施設である横穴式石室(よこあなしきせきしつ)を築いています。
石室
横穴式石室は前室と後室とがある複室構造になっており、全長は約7.22mあります。後室の内部は三つに区分してあります。入口近くには、通路の左右に長方形の平面形をした区画が配置されています。この二区画とほぼ直角方に交わる一区画を奥の壁に沿った状態で作ってあります。この施設は奥と左右に大きな石を並べ、特別な空間を造ってあり、家のような形に仕上げてあります。このような施設を石屋形(いしやかた)と呼んでいます。
装飾文様
装飾文様は、石屋形と入口・側壁、楣石(まぐさいし)にあります。石屋形の装飾は奥壁に靫(ゆき)と三角文を線刻で表現してあります。靫は矢を入れて携帯する容器のことです。入口・側壁にある文様は石の表面に赤色を塗っています。側壁の文様は円文と思われます。楣石は出入口の上に渡した石材で、長方形の石の表面を加工して、靫の形を浮き彫りにしてあります。どの装飾も素朴な原始文様であり、当時の人々の葬られる死者への思いやりを表現したものです。