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韓国発見シリーズ71 「韓国の女性が直面するガラスの壁」

2020年01月01日

女性差別をテーマにした小説「82年生まれ、キム・ジヨン」が映画化され去年10月に公開された。上映2週間で3百万人を動員し大ヒットとなった。2018年には日本でも翻訳出版され、すぐにアマゾンジャパンのアジア文学部門の売上高で1位になった。日本で韓国文学がここまで注目されることは異例のことだという。NHKでもドキュメンタリーが放映され、多くの日本女性たちから共感を得ている。

この小説は1982年生まれの女性主人公キム・ジヨンさんを取り巻く家庭や職場また韓国社会、結婚後の婚家での立場などで女性であるが故に受ける抑圧、理不尽をリアルに描いた作品である。彼女は女児の中絶が最も深刻だった時代に生まれ、女性が受けるさまざまな抑圧に直面して生きていく。厳しい就職戦争を突破してキャリアを積むが、社内では有能ゆえに煙たがられる。結婚し妊娠すると「経断女(出産や育児で職場を離れキャリアが断たれること)」となり、出産後には「マムチュン(自己中心ママ虫)」と卑下され、見えないガラスのような壁が彼女を取り囲んでいる。今の韓国社会が女性に向ける冷たい視線、見えない差別が女性を制約し抑圧する様子が描かれている。

実際、最近の韓国では女性芸能人の自殺がたびたび起きている。彼女たちに対する容赦ない攻撃はSNS上では異常で止まるところを知らない。この点について建国大学ユンキム・ジヨン教授はインタビューで「悪質な書き込みの根源には社会が要求する女性像を規定し、これに合わない女性に向けて行う女性嫌悪があるのです。こうした観点からみれば、悪質な書き込みは従順ではない若い女性を私たち社会が断罪していると分析することができる」と答えた。

人には良心があり、基本的な道徳心や温かい思いやりが備わっているはずなのに、他人を自分の物指しで測り、外れると攻撃し鬱憤を晴らす結果を韓国社会はどう償うのだろうか。それでも人間の心の深いところには純粋な心があると信じたい。

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