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人権・同和教育シリーズ191

2021年08月01日

誰にとっても心地よいネット社会を                   

地域人権教育指導員

宮川 淳一(みやがわ じゅんいち)


前回、インターネット(以下ネット)によるサービスを誰もが受けられる社会づくりについて述べましたが、今回は、ネットと上手に付き合うためにはどうしたらよいか、一緒に考えたいと思います。

「ひまわり」を漢字で書くと、どんなだったかな?とか、ドバイってどこの国だっけ?そんなときに、辞書や地図を広げて調べる人は少ないでしょう。年齢に関係なく、スマートフォンやネットを使って検索する方が最も簡単にしかも素早く調べられます。

最近の総務省情報通信白書によると、利用者を対象にしたネットの利用によりどんな効果があったかをたずねたところ、「生活上で役に立った」「趣味が広がり深まった」「自分の知識や能力が向上した」と感じている人が多いことが分かっています。さらに、「生活上で役に立った」という声の中で、1位だったのが、ニュース・天気、2位がネットショッピングなどでした。 

こうしたネットの利用者は益々増加し、ネットに頼らざるをえない生活そのものになってきています。

「ネットによるトラブル」

一方では、ネットの利便性や可能性とは反対に、ネットの匿名性(誰であるかが分からないように本人の身元を隠すこと)を悪用して起きる事件が後を絶ちません。

例えば、ネットによる差別や個人情報の流出、ネットショッピングでの売買トラブル、パスワードが盗まれて悪用される被害などです。

昨年度、菊池市消費生活センターに寄せられた相談の中でも、ネットショッピングでのトラブル相談件数が全体の3割を占めていました。コロナ禍による外出自粛で、店舗外購入の相談件数が50%と高い割合を示し、いまだに被害回復が出来ていないことが明らかになりました。

そもそも、どうして、こういうネット上のトラブルや深刻な問題が増えてくるのでしょうか。

特に、ネット上のトラブルの中でも、相手の顔が見えないところで、相手を否定したり差別したりする誹謗中傷(人格を否定して傷つけること)が大きな社会問題となっています。私たちは、ふだん、相手の顔の表情や声の調子などもふまえて会話をしています。しかし、ネットを使ったコミュニケーションでは文字だけで相手の気持ちを読み取ることになります。そのため、ふだんの会話と同じ感覚でやりとりをすると、相手を怒らせてしまったりすることがあるのです。

「相手の人柄や気持ちを考えて」

相手を誹謗中傷する理由は個人によって違うでしょうが、非対面の相手だから自分の感情をぶつけたり、直接言えないことを書きたい放題書いたり出来るのでしょう。実は、人は怒りを覚えた時や自分が正しいと思った時こそ、一呼吸おくことが大事だと言われています。

例えば、ある人の投稿に対してコメントをする場合、「○○さんの考えは、まちがっていると思う」はOKですが、「○○さんは、ちっとも分かっていない。だめだ」では、いけないのです。大事なことは、批判的なコメントをする時に相手の人柄や気持ちを考えて伝えることが大切なのです。

つまり、誰にとっても心地よいネット社会をめざすなら、相手の顔の見えない文字だけのやりとりだからこそ、伝えたいことがきちんと伝わらなければなりません。ネット社会は、もはや私たちのくらしの一部分なのですから。

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