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市長メッセージ

Message from the Mayor

平成31年(令和元年)10月 vol.66 灌漑と感慨

2019年11月22日

先日、本市の農業用水群が「世界かんがい施設遺産」に認定された、との嬉しいニュースが飛び込みました。世界かんがい施設遺産とは、100年以上経過し、歴史的・技術的・社会的価値の高いかんがい遺産を、国際委員会が選定・表彰するもので、数年来、本市で申請に取り組んでいました。

本市の対象施設は、江戸時代に作られた築地・原・今村(宝永隧道)・古川兵戸の4つの井手で、日本遺産の一部でもあります。最も古い築地井手は1615年、加藤清正公によるいわば公共工事ですが、驚くことに他の3つは地元の惣庄屋さんをリーダーとし、農民が長年かけて自ら作った民間事業です。

機械も電気もない時代に、さまざまな知恵と工夫で傾斜を計算し、山の上から手掘りでトンネルをうがち、山間部に水を行き渡らせた技術と執念には驚がくの一語。古川兵戸井手の場合は、不足する水を補うため幕府直轄の日田天領にまで直訴するなど、文字通り命がけの難事業でした。

幾度となく折れそうな心を奮い立たせたのは、「子どもや孫の代のために」という強烈な使命感。当時、水は年貢に直結する死活問題で、大規模な水争い騒動も起きています。

菊池の美しい棚田の景観や美味しい米も、井手掘削時の産みの苦しみと共に、その後代々にわたる血と汗の結晶です。日々の地道な努力というものは小さくて普段は目に見えませんが、数百年分の積み重ねがどんなに大きな力を持つか、今回は世界が私たちに教えてくれました。


築地井手の風景写真

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