中央にまでその名を轟かせた、九州の一大豪族

熊本県の北部、現在の菊池市を中心に、平安時代の後期から室町時代にかけての450年にわたって活躍した武士の一族がありました。
その名も、菊池一族。
源氏物語、蒙古襲来絵詞、太平記など、名だたる書物にその足跡を刻み、中央にまでその名を轟かせた九州の一大豪族でした。

一途な信念

菊池一族の大きな魅力は、なんと言ってもその誠実さが挙げられます。代々朝廷の忠臣として奮闘し、たとえ不利な立場になったとしてもその信念を覆すことはなく、一途に志を貫き通したのでした。最盛期の南北朝時代には、全国的な北朝有利の状況にあっても南朝の雄として最後まで戦い抜き、その愚直なまでに信義をつらぬく姿勢は、後の世にまで語り継がれることになりました。

名門の実力

戦乱の中、有力な方に味方して生き残るのが当たり前だった時代にあって、菊池一族が自分たちの信念を貫くことが出来た背景には、彼ら自身の強さがありました。源氏物語に「勢いいかめしき兵」と謳われた菊池一族は、大陸との貿易で経済的基盤を確立し、元寇においては鬼と呼ばれるほどに強かった蒙古軍を退け、南北朝の動乱期には九州征西府をうちたて一時九州の大半を制圧するなど、その実力をもって自分たちが正しいと信じた道を進み続けたのです。

受け継がれた誇り

強く信義をつらぬいた祖先の姿は、一族の誇りとして代々受け継がれていきました。 450年という長い時の中で、それぞれの時代をまっすぐに駆け抜けた父や祖父、さらにその祖先たちに恥じぬようにという想いが、一見不器用にも見える彼らの選択の中に垣間見えるようです。
そして彼らが繋いできたその誇りは地元菊池で、また全国各地で、今も一族の志を継ぐ人びとの中で生き続けているのです。