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人権・同和教育シリーズ207

2022年12月01日

人権・同和教育シリーズ207「わたしには関係ありません」か?

10月5日に、校区人権啓発推進部会(菊池市内13地域毎に組織されており、人権啓発を行っている)の研修を行いました。

菊池恵楓園を訪問し、リニューアルされた歴史資料館を見学しました。

菊池恵楓園を訪問された方も多いと思います。熊本県内各地からの訪問者も多く、今回は天草の人権擁護員さん方と一緒になりました。

ハンセン病は、歴史資料館では次のように説明されています。

ハンセン病は、らい菌の感染に伴い、この菌に対する抵抗力のない人にごくまれに発病する慢性感染性疾患です。変形や機能障害を残すことがあり、昔から偏見や差別の対象になってきました。現在では有効な治療薬が開発され、早期発見と治療により後遺症を残さず完治できるようになりました。

国は1931年「癩(らい)予防法」施行。日本中の全てのハンセン病患者を療養所に隔離。ハンセン病患者が一人もいないことを目指して、患者を密告させ療養所に送り込む官民一体の「無らい県運動」を行いました。ハンセン病は恐ろしい病気という誤った認識を植え付けたのです。1949年プロミン治療が始まり、現在は多剤併用療法が行われています。特効薬の登場で治る病気になったにもかかわらず、1953年には改正「らい予防法」が成立、終生隔離は継続され、1996年にやっと廃止されました。隔離政策は、家族の心まで分断しました。

2003年にはホテルの宿泊拒否差別事件が起こりました。被害者であるにもかかわらず、元患者さん方が誹謗中傷にさらされるなど世の中の常識を疑うような悔しい出来事が続きました。元患者さんに対する差別・偏見・排除と同様の仕打ちは、コロナ禍でも繰り広げられました。

被害者に対して、本人に責任のないことを責め立てる・攻撃する・差別する人が大勢出てくるのです。恐怖や不安は本質を見失わせるということを散々見聞きしてきました。

2019年に、差別と闘うために裁判を起こし、「ハンセン病家族訴訟」で勝訴判決を勝ち取った元患者さん方と、全国水平社創立を成し遂げた西光万吉(さいこう まんきち)らの姿が重なりました。

部落差別をはじめあらゆる差別は、差別をする側の心の問題です。歴史資料館の目的の一つに『ハンセン病問題を教訓にさまざまな偏見と差別の解決を目指す』とあります。病気が治っても、社会復帰ができない、家族のもとに帰ることや家族のお墓に入ることさえできない、本名で生きることができない。回復者の方にこのような生き方を強いているのは、いったい誰でしょうか。

「わたしには関係ありません」でしょうか。無関心の空気が、回復者やその家族にこのような生き方を強いているのではないでしょうか。

目的の二つ目には『ハンセン病問題に関する情報発信と社会との交流を通して入所者及び家族の名誉回復をはかる』とあります。「社会復帰をしたくても、齢をとりすぎた」という内容の手記もありました。時間は待ってくれません。

展示されているものはどれも心に迫ってきます。ぜひ、菊池恵楓園のリニューアルされた資料館に行ってください。心に響く何かがあると思います。


文責:地域人権教育指導員 末永 知恵美(すえなが ちえみ)

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