健康増進・維持のために必要なことの一つとして睡眠が挙げられます。睡眠について、今年2月に厚生労働省から「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」が公表されています。今回は、このガイドを参考に睡眠について考えます。
健康づくりにおける睡眠の意義
睡眠は、こども、成人、高齢者のいずれの年代においても健康増進・維持に不可欠な休養活動です。睡眠不足は、日中の眠気や疲労に加え、頭痛等の心身不調の増加、情動不安定、注意力や判断力の低下に関連する作業効率の低下、学業成績の低下等、多岐にわたる影響を及ぼし、事故等の重大な結果を招く場合もあります。
また、睡眠不足を含め、様々な睡眠の問題が慢性化すると、肥満、高血圧、2型糖尿病、心疾患や脳血管障害の発症リスクの 上昇や症状の悪化に関連し、死亡率の上昇にも関与することが明らかとなっています。また、うつ病などの精神疾患においても、発症初期から睡眠の問題が出現し、再燃・再発リスクを高めることが知られているとともに、睡眠の問題自体が精神障害の発症リスクを高めるという報告もあります。
そのため、日常的に質(睡眠休養感)・量(睡眠時間)ともに十分な睡眠を確保することにより、心身の健康を保持し、生活の質を高めていくことは極めて重要です。
十分な睡眠の確保は重要な健康課題
令和元年の国民健康・栄養調査結果において、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者の割合は、男性 37.5%、女性 40.6%であり、性・年齢階級別にみると、男性の 30~50 歳代、女性の40~50歳代では4割以上を占めていました。
また、令和3年のOECD(経済協力開発機構)の調査報告でも、日本人の平均睡眠時間は調査対象 33 カ国の中で最も短い結果となっています。
今、日本国民にとって、一人ひとりの十分な睡眠の確保は重要な健康課題といえます。
ライフステージごとの睡眠についての推奨事項
必要な睡眠時間には個人差があるとともに、年代によっても変化する等の特性を踏まえた取組が必要となります。
(出典 「健康づくりのための睡眠ガイド2023」より
良質な睡眠のための環境づくり
良質な睡眠をとるためには、生活習慣や睡眠環境等を見直し、「適正な睡眠時間を確保」するとともに、以下のポイントを確認し「睡眠 休養感を高める」ための方法を生活の中に取り入れてみましょう。
- 日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなります。
- 寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながります。
- 寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝の約1~2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなります。
- できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながります。
- 適度な運動習慣を身につけることは、良質な睡眠の確保に役⽴ちます。
- しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えると、体内時計が調整され睡眠・覚醒リズムが整います。
- 就寝前にリラックスし、無理に寝ようとするのを避け、眠気が訪れてから寝床に入ると入眠しやすくなります。
- 規則正しい生活習慣により、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつけることで睡眠の質が高まります。
- カフェインの摂取量は1日400mg(コーヒーを700cc程度)を超えると、夜眠りにくくなる可能性があります。
- カフェインの夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響しやすいです。
- 晩酌での深酒や、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は、睡眠の質を悪化させる可能性があります。
- 喫煙(紙巻きたばこ、加熱式たばこ等のニコチンを含むもの)は、睡眠の質を悪化させる可能性があります。
今回、健康づくりの一つである睡眠について最新の方法を確認しました。「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は多くの学術論文や日本人の現状値等を考慮して設定したものでありますが、実際に取組むに当たっては、個人差(健康状態、身体機能、生活環境等)を踏まえて、可能なものから取り組んでいきましょう。